こんな高校生活があるだろうか・・・。閉ざされた山の中の学校は、暴力に次ぐ暴力、脱走に次ぐ脱走というこの世の物とは思えない生活があった。
ダウンタウン浜田雅功が「地獄」と表現した日生学園第二高校を卒業した年に私は入学した。見聞きはしていたものの、待っていたのは想像をはるかに超える、旧式軍隊さながらの生活。「懲役3年」と言われながらも、なんとか生き抜いた日生学園の3年間を振り返る。
先輩の素顔
最初に書いた通り、日生学園での生活において3年生は「天皇」である。その上にいる教師は別カテゴリーとも言える。彼ら教師は世間一般で言う「大人であり、社会人」で、我々生徒とは一線を画している。とは言え、日生学園のシステムとして寮監とそうでない者がいるし、立場によっては教師と思っていいのか悪いのかわからない者もいる。この辺りの話は別でするとして、1年生から見た先輩の事である。
当然、人間なので個人差があり、全ての先輩が1年生に対して厳しいわけではない。身の回り全ての事に対して世話をさせる先輩もいれば、最小限しかさせない先輩もいる。不公平にも見えるが、担当になった先輩によって大きな差が出るのが、日生学園の怖い所でもある。
どの学校でも同じだと思うが、気が弱く、目立たないタイプと、大部分を占める普通なタイプ、割合は少な目だけど、やんちゃで喧嘩強い、不良タイプ。大きく分けるとすれば、こうなるだろう。それは日生学園も一緒で、それぞれの学年でも同じである。やんちゃタイプの先輩になればなるほど、世話が多くなる傾向で、就寝時にはマッサージまでさせられるし、靴下までも履かせる先輩もいた。一方で世話をしないでもいい、それどころか1年生を気遣ってくれる先輩もいるので、今の時代で言う「ガチャ」の当たり外れの差は計り知れない。「いじめ」に遭っているか、いないかぐらいの差だからだ。
しかし、残念ながらここは日生学園だ。そんな事を感じさせない事はいくらでも起こる。理由は追々書くとして、3年生が1年生を怒る場面がしばしばある。心行を延々とやらせる体罰もあれば、ずっと正座させられる時もあるし、一人残らず万遍になく殴られ蹴られ、あちこちに痣が出来る事もある。そういう時は3年生の中でも「権力のある人」が先頭に立っている。つまりやんちゃな人。だからやり方もきつい。いくら気の弱い、優しい先輩でも、この時ばかりは助けてくれない。「こいつ(優しい先輩)は何も言わんかもしれんが、俺はちゃうぞ、ゴルァ!!」と、一層、力がかかる気がする。
そういう3年生から見れば、自分の1年生はしっかり躾しているので、ちゃんと出来ているが、優しい先輩が担当している1年生は、甘やかされていると思われている。
3年生は見ている。偏見を持って1年生を見ている。態度がでかく見える子、気が弱い先輩を見下す態度をする子、生意気と取れる言葉を使う子、ちょっと人より動作が遅い子、何度も間違う子、やっているフリで切り抜けようとする子。そんな1年生をいつもチェックしていて、言う事を聞かせようとする。
何故か?
それは、自分達に災いが降りかからないようにするため。日生学園は何でも連帯責任だ。下級生が教師に怒られるような事を起こせば、上級生がそれ以上に怒られる時がよくある。そういう事を避けようと思えば、下級生が、特に入って間もない1年生などは、厳しく躾をするのが一番だからだ。ただでさえストレスの溜まる日常生活において、他人のせいで怒られ、罰を受ける事が許しがたいのだ。
3年生だけが教師に怒られ、体罰させられ・・・という場合は、全体の空気が悪くなり、3年生の顔色を伺う、息の詰まる時間が続く。ちょっとでも気に障る言動があれば、何をされるかわからないので、「ただただ言葉は発せず、微動だにせず」という感じでやり過ごすが、1年生のせいで3年生が怒られたとなると、恐怖でしかない。
ちなみに、2年生はどうか?というと、3年生からすれば下級生なので、体罰もするし、殴る蹴るもする。しかし、1年耐えての2年生なので、それほどでもなかったように思う。1年生に対しては、3年生が言わない、細かな注意や躾的な事を、時には殴りながらしていたと記憶している。
ただ、こればかりは寮や、階によって差があると思う。日生学園では寮単位、階単位でやり方、方針に多少の違いがあり、プラス上にも書いた、どのタイプの人が多いか?によっても差がでてしまう。極端な話、優しい人ばかりの寮だったら、楽園かもしれないし、逆にやんちゃな人ばかりの寮だったら、事あるごとに死人が出るんじゃないか?とさえ思う。そんな中での「どっちつかず」の2年生は、1年生よりは「楽」だけど、3年生にも睨まれている。
ちなみに私が2年生の時は、3年生が厳しく、1年生より我々2年生を締め付けていた。他の寮はそうでもなかったようだが、我々の寮だけは執拗に2年生が標的にされていた。その理由はわからないが、ようやく少しは楽になったと思えたのに、辛い2年生生活だった。それでも耐えられたのは、1年生の生活が基礎になっているのは事実だ。
上級生にまつわる話は、内容を忘れるほど多い。そのうちまた書きます。
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