日生学園 残酷物語 3

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日生学園「残酷物語」
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こんな高校生活があるだろうか・・・。閉ざされた山の中の学校は、暴力に次ぐ暴力、脱走に次ぐ脱走というこの世の物とは思えない生活があった。

ダウンタウン浜田雅功が「地獄」と表現した日生学園第二高校を卒業した年に私は入学した。見聞きはしていたものの、待っていたのは想像をはるかに超える、旧式軍隊さながらの生活。「懲役3年」と言われながらも、なんとか生き抜いた日生学園の3年間を振り返る。

日生学園の掟「全力」

日生学園には「掟」のようなものが多数存在する。その最たるものが「全力」である。とにかく「全力」が好きで、いつでも、どこでも、なんにでも「全力」をつけたがる。

全力心行や全力体操、学校棟にあるピロティ(広場)には「棒全力無我 無我通天」と書かれた大きなレリーフがあるし、教室には額縁に入った全力の字、全力と書いたハチマキが全員に支給され、事あるごとに頭に巻く。怒られる時も、「それがお前の全力か?」と言われ、説教される時も「全力で行う事で・・・」と続く。寝る時でさえ、「全力で寝ろ!」と言われ、「ハイ!」と大声で答えながら、「?」であった。

ここまで徹底していると「日生学園は宗教の学校ですか?」とよく聞かれたが、まったく関係ない。確かに創始者の青田強氏は、「世の一隅の光たれ」という言葉を筆頭に、「太陽」とか「日の精神」とか一見、宗教じみた言葉を多用する。理想なのだろうが、高校生には理解しづらい。

そういう人になる事を目標にしているものの、その過程として行われている全力心行やマラソン、一つ一つの行動を利用して体罰が行われている現実が日生学園にはあった。

この態勢で床を磨く「全力心行」

この写真の態勢で床を磨くのだが、足腰にかかる負担が激しい。このまま前進する場合もあるが、その場で腕を前後に動かして床を磨く。 夏場など数分もすれば汗が滴り落ち、床が濡れて雑巾に含まれる水分が多くなると、滑りづらくなり丸まってしまったりしてまともに前後運動が出来ないし、動きもスローになってくる。そうすると全面から教師や先輩から背中を押される。この態勢だと重心が後ろにあるので、背中を押されるとすぐ後ろに倒れ、しりもちをついてしまう。しかし、すぐ起き上がってまた磨かないとならない。

床を磨くのはだいたい2、3分なのだが、「ワッショイ」の声を出しながらなので、かなりの運動量になる。冬場などは冷え切った道場(体育館)にいてもすぐに体が温まるのだが、朝5時頃にやっている事なので朝練どころの話ではない。ちなみに教師達は3時ぐらいからやっていた。

日生学園で体罰として心行がよく使われた。先ほども書いたが、磨かせながら背中を押す。いや、突き飛ばすという表現が正しい。延々と磨かされ突き飛ばされまくる。違反物を持っているのがバレた、脱走して連れ戻された、何かをサボったのがバレた。理由は何でもある。

さらにキツいのが、延々と床を磨かされている途中で正座をさせられる事。あの態勢から正座をすると、ももの筋肉が悲鳴を上げ、ガクガクになる。ちなみに「用意」の言葉で床を磨き始める。「用意」→「やめ」→「正座」→「用意」とループで1時間もやらされると、最後は立てなくなる。

心行をさせられる事自体、「己の心を鍛える」として日生学園では正当化されているので、悪いことをしたら、「自分を見つめなおす」という理由で心行をする。これはいいが、心行をするように仕向ける事もあったし、自身も「心行して許してもらおう」という心理が働く。これを利用した体罰になっていたのだ。

対先輩になると、「雑巾持って集合」と言われる。これは「今から心行させてやる」なのだ。体罰といじめが入り混じる内容になるのは言うまでもない。そんな場面を教師に見られても「教育的指導をしている」ように見せればいいだけの話だし、教師自体、気にもしない。

雑念を取り払い、自身を鍛錬させるために創始者が取り入れた心行が、体罰やいじめの手段になって寮内の至る所、様々な場面、時間を問わず行われていたのだった。

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